『誰よりも狙われた男』現代スパイの心理戦。 ★★★★

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誰よりも狙われた男

A Most Wanted Man/監督:アントン・コービン/2014年/アメリカ・イギリス・ドイツ/122分

劇場公開日:2014年10月14日劇場公開 公式サイト

鑑賞日:2014年09月28日 【試写】東京国際映画祭プレイベント上映会 にて

映画川柳

もういない 彼の演技が 魅せるもの

予告編

ざっくり、あらすじ

現代のスパイは地味なんだ。

9.11以後のテロ対策におけるスパイが、
ドイツのハンブルクを舞台に耐えて耐えて耐えまくる作品。

感想、思ったこと

■地味。

いやー、ラストには痺れました。じわりじわりと展開していく地味な作品でありながらも、とても楽しめました。 先に言っておきます。銃撃戦やカーチェイス、派手なアクションは一切ないです。でも、このタイプの作品は大好きです。

ちなみに今回の試写は”誰よりも早く”観れたらしいです(笑)

本作はジョン・ル・カレという作家の作品を映画化したものになります。スパイ小説で有名な方なので、その方面が好きな方には有名人かと思います。また、映画化もよくされていて『ナイロビの蜂』や『裏切りのサーカス』も彼の作品です。

スパイって聞くとジェームズ・ボンド(『007』シリーズ)やイーサン・ハント(『ミッション・インポッシブル』シリーズ)のようなものを思い浮かべると思います。映像作品として、派手なアクションや美女とのイチャイチャはあったらそりゃ楽しいのでいいんですけど、実際のところ派手にスパイが暴れ回っていたら大変な話ですよね(笑)

そんなスパイのイメージを持っていると、地味すぎて退屈だと思われてしまうかも知れませんが、現代社会でテロ対策として秘密裏に動いているスパイを想像してもらえるとこの作品の世界観はすっと入ってくると思います。

『裏切り~』を観たことがある方は、そのイメージのままで大丈夫だと思います。舞台にしている時代なども全然違いますが、ああいう地味で退屈な映画です。でも、じわりじわりと展開して行くのです。

『裏切り~』が難しくてダメだったという人も本作は現代が舞台ですし、背景知識などがなくても楽しめると思います。また、『裏切り~』が諜報機関内でのスパイ探しだったのに対し、『誰よりも~』はより実践的なものなのでわかりやすいかなと感じました。

■フィリップ・S・ホフマン、最後の主演作品

今作を語る上で外せない要素がフィリップ・シーモア・ホフマンのことなのかなと思います。 そのおかげで正当な作品評価をするのが難しいような気もします。 彼の訃報が世間を騒がせたのが今年の2月のことでしたね。46歳というまだまだ現役バリバリの俳優の死ということで衝撃を受けました。どんな役でも存在感を放ち、ポール・トーマス・アンダーソン監督との相性がよく新作にも出ないかなと期待していたんですけどね、残念です。『ハンガーゲーム』シリーズにも出演しているというのに、結構重要そうな役なのに、と言い出したらキリがないので、そろそろ辞めます(笑)

そんな彼の最後の主演作が『誰よりも狙われた男』ということで注目を集めているのですが、もうあのクライマックスの何とも言えないやるせなさのようなものを醸し出す彼は必見だな、と思います。痺れました。

もちろん、彼だけでなく脇を固めている俳優陣もたまらなく魅力的です。

『アバウト・タイム ~愛おしい時間について~』のレイチェル・マクアダムス。
『美しき絵の崩壊』のロビン・ライト
『スパイダーマン』シリーズのグリーン・ゴブリンことウィレム・デフォーなどなど

個人的にはジャマール役のMehdi Dehbi(マハディ・ザハビ)がイケメンな上に、いい表情していたなと感じました。第25回東京国際映画祭サクラグランプリを受賞した『もうひとりの息子』という作品に出演しているのでチェックしないといけないですね。

■これがリアルなのか。

この作品ではテロ対策のためにスパイとして地味に地味に動いていく作品なのですが、あんな感じにひたすら相手を泳がせて、耐えて耐えて平和のために闘っているのかと思うと、頭がおかしくなりそうです。スパイと言えど人間なんですからね、時には非情にならなければならないこともあるでしょうし、やっぱりおかしくなってしまいそうです。

時折出てくるベイルートという地名。地中海に面した中東の国レバノンの首都ですね。そこで、何やら主人公がミスをしたという話が出てきたり、今後の展開、主人公の葛藤などまだまだ描き切れていないこともあるように感じました。ああ、あれも伏線か(笑)

現代社会においてスパイが心理戦を繰り広げていく、リアルさには納得させられてしまいます。いや、そうだよなと切なさを感じました。

最後に『誰よりも狙われた男』というタイトルが示す意味がわかると、やっぱり頭がおかしくなりそうです。

地味ですが、張り詰めた雰囲気で見応えのある作品でした。