[映画の感想]『消えた声が、その名を呼ぶ』深く味わう歴史的事件の断片

消えた声が、その名を呼ぶ

(C)Gordon Muhle/ bombero international

[映画の感想]100年前に起きたアルメニア人虐殺を一人の男を通して描いた『消えた声が、その名を呼ぶ』を試写会で観てきました。歴史的事件を扱っているために重みのある物語で、暗示的に散りばめられた要素が映画を観る楽しみを与えてくれる作品でした。

 

消えた声が、その名を呼ぶ

The Cut/監督:ファティ・アキン/2014年/ドイツ・フランス・トルコ他合作/138分

 

劇場公開日:2015年12月26日劇場公開(PG12) 公式サイト

 

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ざっくり、あらすじ

 

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アルメニア人が虐殺されたと言われる100年前の歴史的事件を題材に、一人の男・ナザレット(タハール・ラヒム)が突然引き裂かれることになってしまった家族に会うためにする長い長い旅を描いた作品。

 

感想、思ったこと

観る前は、そこまで期待しておらず「アルメニア人虐殺」に関しても世界史でさらっと触れたくらいの記憶しかありませんでした。でも、この映画を観てみると知識のなさが何だか恥ずかしくなるような、そんな現実を突き付けられました。

■歴史として知るべき事実

「アルメニア人虐殺」は今から100年前の1915年、第1次世界大戦時中にオスマン帝国(現在のトルコがあるところ)で起きたことです。正直、これくらいしか知りませんでした。

どれくらいの人が犠牲になったか、どういった経緯があったのか、など詳しいことは全然知りませんでした。高校の世界史で触れた記憶もなく、浪人時代に気になって調べたんですよね。日本での認知というか、重要度はその程度なんじゃないかな、と思います。教科書に載ってるのかな……。本を読みたい。

 

実際、映画を観てみるとこれが現実に起きていたと考えるとぞっとするような描写があり、なかなか観ていて辛かったです。実際はもっと、もっと凄惨な光景が広がっていたんだろうし、渦中にいた人たちの絶望はとてつもなく大きなものだったんだろうな、と感じました。

 

そして、改めてこの歴史的な事件について知りたくなりました。映画ってそういう側面があるなーとは常々思っていて、史実を基にしたものや実話ベースのものなんかはそれに関連することを映画のあとに調べて補完したくなるんですよね。

この作品もそういう補完がしたくなる作品でした。

 

今回の試写会は上映後に映画解説者の中井圭さん、映画評論家の松崎健夫さんという映画好きにはたまらないお二方のトークショーがあって、上映後に内容の整理と補完への道標を示してくれる内容だったので、余計に「知りたい」という気持ちが強くなったのかもしれません。

そのトークショーで出てきたアトム・エゴヤン監督の『アララトの聖母』は全くもって聞いたことのない作品だったので、観なきゃなと思いました。

もちろん、本作のファティ・アキン監督作品も見返したいですね。

 

■直接語ることはしないけど……

トークショーの中で、本作に散りばめらている「示唆」についての話もあって、主人公ナザレット(タハール・ラヒム)がはっきりとした善人ではないこととキリスト教の7つの大罪の話は、観ながらそういうことなのかなーなんて思っていたので、腑に落ちるところがありました。映画の歴史にまで発展していったのは笑ってしまいましたけど、妙な説得力があってその視点でもう一度観たくもなりました。

また、ナザレットが声を失うのが物語としてだけではなく、映画をスムーズにさせるある種道具としても機能しているという話は本当で、違和感なく何カ国も旅していく映画の言語面をクリアしているんですよ。これは巧いなーと思わざるを得ないです。

そんなこんなで、この作品にはただの「娘を探すために旅をする」という単純なストーリーに深みや奥行きをもたらす「示唆」があって映画ならではの余韻を残してくれるのがよかったです。

 

どんな人にでもオススメできるかと言うと、一瞬悩んでしまう(残酷な描写や題材の重さなど)部分はあるんですけど、気になっている人は観て欲しいし、映画が好きという方には見応えたっぷりな作品になっています。

「面白い」や「泣ける」って言うような言葉で片付けられないことが詰まっている作品でした。

 

予告編

 

 

消えた声が、その名を呼ぶ

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