[映画の感想]第67回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリとパルムドッグ賞を受賞したことでも話題の犬映画『ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲』。試写会で一足お先に鑑賞できたので色々と書いていきます。これ、素晴らしいです。こんな犬映画観たことないです。
ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲(ラプソディ)
Fehér Isten/監督:コーネル・ムンドルッツォ/2014年/ハンガリー・ドイツ・スウェーデン/119分
劇場公開日:2015年11月21日劇場公開(PG12) 公式サイト
映画川柳
我が家でも 愛することを 忘れない
ざっくり、あらすじ
ニンゲン、キライ
雑種犬に税金が掛かる街で愛犬ハーゲンと別れることになってしまった主人公のリリ(ジョーフィア・プショッタ)が、その愛を試される作品。
感想、思ったこと
この映画、ひと言で表すのが難しいくらいに素晴らしかったです。あえて、ひと言で言うなら「犬!」なんですけどね。日本にようやく来たかという気持ちもあり、感動を通り越した何かが胸にいっぱいです。
■犬を飼っているからこそ、わかる気持ち
雑種犬に税金が掛けられることになった街が舞台になっています。そのために、人々の雑種に対する冷たい視線があるんですよ。主人公が飼っているハーゲンって犬に対しても冷たい、冷たい。というか、犬に対してどこかネガティブなイメージを持っている街なんですよね。
自分は、犬を2匹飼っているくらいの犬好きなので、もうその冷たさだけで、ツラいんですよ。「どうして?可愛いじゃん!」ってなってしまうわけです。あっという間に、主人公の気持ちにも、ハーゲンの気持ちにも寄り添えちゃったんです。
税金掛かるとなると家には置いておけないってなるじゃないですか、そしたら犬はどうなるのか。ご想像の通りの展開が待ってます。
ハーゲンを守るために戦うリリ(ジョーフィア・プショッタ)を観ているのもなかなか辛かった。
でも、そこからの展開が何とも海外だなーと思えるようなものになっていて、日本だと馴染みはないかもしれません。でも、犬が虐げられる様を見せられるのは、ただひたすらにツラいです。
そこからのクライマックスは、もうカタルシスとかそういうものじゃなくて急に現実味を帯びた恐怖っぽくなってしまって、ニヤついてしまいました。うちにいる犬も雑種だし、ヘタすれば……。そんなこと考え出したら最後ですね。映画に飲まれました。
人じゃないところで他人事じゃない感を感じるとは、恐るべし。
と、ただの感動ものかのように思っていると顔面右ストレートを喰らいますので、注意してください。描写は妥協なき残酷さがあります。
■CGじゃない、圧倒的な犬の洪水
そして、この映画に登場する犬が本物と聞いて驚きました。「何匹いるんだよ」となる犬の大洪水シーンは総勢250匹もの犬を実際に走らせているらしく、しかもみんな施設にいた犬ということを聞いて、口開いちゃいました。
もう、これはカンヌも納得の圧倒的な犬量なのです。
主人公犬のハーゲンはラブラドール・レトリバーとシェパード(しっぽの感じ)のミックスなのかなーとどうでもいいこと考えながら映画を観てて、ふと違和感を感じるんですよ。なんだろうなーと思ったら、途中で顔が変わるんですよ。何事かと思ってたんですけど、エンドロールで謎解明しまして、ハーゲン2匹の犬が演じてるというから、これまた驚きました。
兄弟犬で2匹揃ってカンヌ、パルムドッグを受賞するという恐ろしい才能の犬です。
でも、これが本当に犬の演技力ってこんなに高いの?と思うくらいに喜怒哀楽を表現していて一見の価値ありです。クライマックスのはじめの方とかクソかっこいいシーンもあって、ニヤニヤマックスでした。
ということで、グダグダと色々書いてきましたが、ここに来て今年ベストに喰い込むような作品に出会えたことが嬉しくて嬉しくて仕方ないです。
ラストの余韻含めて、この作品が持つ犬の力をぜひ、感じて欲しいなという思いでいっぱいです。いやー、やばい。
ありがとうございます。
予告編