[映画の感想]スティーブン・スピルバーグ監督とトム・ハンクスがタッグを組んで、脚本はコーエン兄弟が担当という話題作観てきました。アカデミー賞にもノミネートされた本作は揺るがない信念を貫いた男を丁寧に静かに描いた作品でした。
ブリッジ・オブ・スパイ
Bridge of Spies/監督:スティーブン・スピルバーグ/2015年/アメリカ/142分
劇場公開日:2016年01月08日劇場公開 公式サイト
映画川柳
貫いた スパイの間 架かる橋
ざっくり、あらすじ
俺はどっちも譲らん!
アメリカとソ連(ロシア)が冷戦をしていた時代に、アメリカで捕らえられたスパイ、アベル(マーク・ライランス)を弁護することになったジェームズ・ドノヴァン(トム・ハンクス)の姿を実話をもとに描いた作品。
感想、思ったこと
ここ最近、妙に戦争関連の映画が多いというか、そんなものばっかり観ている自分がいるのですがよかったです。いやー、厚みのあるドラマはトム・ハンクス似合いますよねー。
■実在のジェームズ・ドノヴァン
冷戦時代の話なので、今からそう遠くない史実ではあります。でも、彼のことは何にもと言っていいほど知りませんでした。静かな物語ではありますけど、見応えたっぷりのドラマがありました。
トム・ハンクス演じる、弁護士ジェームズ・ドノヴァンがソ連のスパイを弁護することになるところから話がスタートするんですよ。そこから、話が発展してアメリカのスパイとソ連のスパイをトレードする調整役に抜擢されて、ドキドキの交渉が行われるという、ね。
タイトル通りにスパイたちの橋となったドノヴァンという男の話なんです。そんな彼とソ連のスパイ、アベルの間の信頼関係や友情も含まれているので、ドラマに厚みが増しています。さらに冷戦の時代という歴史の重みが加わって、スピルバーグ監督ときたら間違いないですよね。
これが実際にあった話っていうんだからビックリですよね。国家間が表立って交渉しあえないから、水面下で動くことになる、言ってしまえば一般人が国のためにではなく、弁護士として自らの信念に基いて動いていく姿は熱くなるものがありますよね。
クライマックスの橋の上でのシーンは、なぜだかうるうるしてきちゃってる自分がいて、びっくりしました。あの後、どうなったのか考えると切なくて、悲しくて、うう。同じ人としてドノヴァンがアベルと向き合ってきたからこそですよね。
とはいえ、見せ場という見せ場のある作品じゃなくて、ちょっと偵察機でアクションっぽいのがあるくらいなんですよね。そのあたり、退屈と感じてしまう人も多いと思いますけど、あらかじめそういうのがないっていうことを頭の片隅に入れておくだけで感じ方は変わってくるかなと思います。
■丁寧すぎなんじゃないかってくらいの
対比描写だったり、タイトルの意味だったり、何もかもわかりやすく描いてくれているので何か事前に知識が必要とかそういうことはないです。むしろ、ここから冷戦について学んでいくのもいいんじゃないのかな、なんて思います。
舞台がちょうどベルリンの壁が作られている東西に分断されたドイツなので、冷戦真っ只中ですからね。
映画館に中学生くらいの子が5人組くらいで来ていて、映画が終わった後「ドキドキしたー」とか「面白かったな」なんて話を後ろの席でしていたのが印象的でした。ただ、何度も座席を蹴られたのは腹立たしかったですけどね!
駆け引きだけで十分面白いんですからすげーっす。
アクションがない分、映像の刺激も抑えられているので年齢問わず(もちろん、難しいと感じる人もいると思いますけど)楽しめる娯楽作品なのかなと思います。
トーマス・ニューマンの優しくも芯のあるピアノの旋律は心地よさもあるのですが、不穏な響きも持ち合わせているので、作品によく合っていました。そこに絡みあうストリングスが効いてるんですよね。
個人的にお気に入りは「Rain」という楽曲です。雨の中の尾行をスリリングなものに演出している上に、そんなに長いシーンではないのにここまで印象づけるというのはこの音楽も一つの要因だろうなと思います。音楽のわかりやすさも、この映画の魅力の一つかなと思います。
『007 スペクター』のスパイとはまた違うアプローチで、そりゃそうだよなとは思いましたけど、いやはや作曲家ってすごいです。
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アカデミー賞の授賞式前に観れる関連作品なので、興味がある方はぜひご覧になって観てください。
予告編