[映画の感想]ニコラス・ウィンディング・レフン監督の最新作『ネオン・デーモン』観てきました!美しさを追求するモデルたちの醜い争いとその結末、衝撃的。映画館で浴びるように観ておきたい映像と音楽の狂演でした。女って怖いわ〜。
ネオン・デーモン
The Neon Demon/監督:ニコラス・ウィンディング・レフン/2016年/フランス・アメリカ・デンマーク/118分
劇場公開日:2017年01月14日劇場公開 R15+ 公式サイト
映画川柳
憎まれて 女はきれいに なっていく
ざっくり、あらすじ
トップモデルになりたい。
モデルを目指して田舎から出てきたジェシー(エル・ファニング)がファッション業界で順調にステップアップしていくシンデレラストーリーかと思ってみていたら痛い目に遭う愛憎渦巻く作品。
感想、思ったこと
『ドライヴ』『オンリー・ゴッド』に続いて『ネオン・デーモン』。ようやく、汗臭そうな男の世界ではなく、いい匂いがしそうな女性たちがいっぱい出てくる映画を撮ってくれた監督に感謝します。内容は、それは、まあニコラス・ウィンディング・レフン監督ですからね、一筋縄ではいかないのですが、おおいに楽しませていただきました。後半のニタニタ度は高めです。ライカのカメラ使ってくるあたりがもう変態なニオイを撒き散らかしてると思います。
美しいものはだいたい醜いものからできているんだろうなって。”トップ”とは誰よりも上にいることで、そのために手段は選ばないし、内側からどんどん穢れていくものなのだろうと思います。
■映像と音楽がクレイジー
この映画は、美しく華やかな世界と思われているファッション業界を舞台に、美しさを追求しすぎるモデルたちの果てなき欲望を描いている作品なのです。だから美しさや華やかさの裏側にある、憎しみや嫉妬みたいな非常に醜いものをこれまた非常に洗練された映像で表現しております。一番わかりやすいのは均整のとれたシンメトリーな構図。正確には左右非対称ではないけれど、「計算してまーす」みたいな画が多いんですよ。レフン監督ですからね。それがまた腹が立つほど美しい。
過去作品でも、同じように表現している部分はそりゃもちろんいっぱいあるんですけど、今回は余計に鼻についたというかなんというか。ナルシストな感じの映像に仕上がっていたんじゃないかなって思います。「これ、どう?好きっしょ?」みたいなやつ。はい、好きです。この作品はぜひともUltraHDのブルーレイで出して欲しいですね。4Kテレビとかで映えそう。ギャガさんお願いいたします。
そんな映像に絡まってくるのが、クリフ・マルティネスの音楽。ネオンという言葉から連想していた、テクノサウンドが冒頭からガンガンに鳴ってくるので、それを受け入れたら最後、映画が終わるまで囚われの身です。ちょっと時代遅れっぽい感じがまたダサくて、ちょうどよい感じ。うん、シンセな感じがダサい。
いやーサントラだけでも楽しめるくらいよい音楽ですね。年明け早々ナイスなサントラです。
■話の内容は、まあ置いときましょう
レフン監督のいいところは映像でとにかく物事を語るから、観ている側に解釈の余地を与えてくれるところ。「あのシーンってこういう意味かな」「これはアレか」みたいな。終わったあとも観た人同士で語り合うのもよし、な余韻をしっかりくれるところ、好きです。
が、物語として観たときの話の内容はだらだらしている印象を受けるんですよね。前作にいたってはおっさんが突然カラオケしだすから。こういう言い方すると馬鹿にしているみたいだけど、『オンリー・ゴッド』はそれでまたライアン・ゴズリングの葛藤が描かれていて、見応えはありますよね。うーん、一言でいえば、わかりにくいんですよ。わかりにくい。わざとわかりにくくしているんでしょうけど。
そのせいで、びろーんって引き伸ばされたお話になっている気がしてしまうわけです。それをいい意味で誤魔化しているのが、映像と音楽だったので、もちつもたれつな感じもします。
ポイントとしてはエル・ファニングは主役にふさわしかったかと言われると、ちょっと首をかしげたくなります。ただ、ぱっとデビューして姉ダコタ・ファニングをあっという間に追い抜いて活躍している様はちょっと主人公ジェシーにも重なる部分があるのかなーと。そう考えたときに彼女が秘めている野心だったり、自惚れな部分に妙なリアリティを感じてしまいました。失礼な話ですけどね。
食うか食われるかの競争が激しい世界ならではのこととは思いますけど、女性って本当に怖いですよね。
映画館で浴びるようにご鑑賞ください。