ナバット
Nabat/監督:エルチン・ムサオグル/2014年/アゼルバイジャン/106分
劇場公開日:未定
鑑賞日:2014年10月30日 【第27回東京国際映画祭】TOHOシネマズ日本橋 スクリーン6 にて
映画川柳
ナバットの 灯が揺れる 映像美
予告編
ざっくり、あらすじ
ナバットが灯す希望の光。
村はずれに住むナバットが戦争に行った息子を
思い過ごす姿を映像で語り尽くす作品。
感想、思ったこと
■アゼルバイジャンってどこ?
アゼルバイジャン映画というのは初めてなんですが、こんなにも映像で語ってくるとは思ってもみませんでした。セリフは少ないですし、カット数も少ないんですよね。冒頭で谷を歩くナバットの姿を静かに追っていくカメラで一気に引き込まれました。隣の方は途中で夢の世界に行っていたので退屈な動きのない映画だとも言えます。
アゼルバイジャンは中東の国で元ソ連だったということくらいしか知らなかったので「アゼルバイジャンってどこだよ!?」と思いながら鑑賞したのですが、観終わった後少し歴史を知りたいなと思いました。世界史の資料集を引っ張り出してきたんですけど、あんまり書いてなかったです。残念。ただ、今作は監督が実際に聞いた女性のエピソードを基にしているそうなので、ちょっと調べてみるとソ連が解体した、今から20年程前に”ナゴルノ・カラバフ戦争”っていうのがあったみたいです。その不安定な情勢下が舞台になっているので、遠くで銃声が聞こえたりしていたんですね。なるほど。
この作品はそんな戦争を背景に反戦のメッセージを描いているようでした。
■戦争に赴いた息子を想う
戦火が村に迫ってきても、ナバットはいつも通りの生活を続けるのですが、その姿が逞しいんですよね。それは息子を想っているからこそというか。いつか戻ってくるだろうと思っている息子のために、帰る場所がなくならないように。
動物を象徴的に使っていて、戦争を暗示させているのも面白いなと思いました。オオカミと人間。食うか食われるか。上手く言葉にできないのですが、映像で語る凄みを感じさせられました。そういう映画は見てて面白いですし、映画を観たなって気になりますね。
とにかく抑えられた演出の中で音楽なども必要最低限でしか鳴っていないんですけど、エンドロールで流れる曲のラストが希望を感じさせる終わり方をしていて、救いがあるのがまたよかったです。
きっと、劇場公開などはされないと思いますが、自分の中では沁みる映画でした。