どうも、映画おバカ・manabu( @mnbspark )です。ローマ教皇が亡くなったのちに行われる、教皇選挙という厳粛な儀式。その裏側で起こるミステリーを重厚に、丁寧に描いた傑作。枢機卿たちの政治劇と人としての葛藤に深いテーマが隠されていて、見終わった後に、何かを考えるきっかけを与えてくれるような作品になっていました。テーマがテーマなのに、不思議と後味は軽やかです。アカデミー賞脚色賞も納得。なんならもっと獲ってもよかったのでは。

教皇選挙
● まさしく、極上のミステリー
● 枢機卿の政治、そして投げかけられる問い
● 重厚な映像に見入るしかない
原題:Conclave
劇場公開日:2025年03月20日
アメリカ・イギリス/2024年/120分
監督:エドワード・ベルガー
音楽:フォルカー・ベルテルマン
出演:レイフ・ファインズ/スタンリー・トゥッチ/ジョン・リスゴー/カルロス・ディエス ほか
あらすじ・解説
全世界14億人以上の信徒を誇るキリスト教最大の教派・カトリック教会。その最高指導者で、バチカン市国の元首であるローマ教皇が亡くなった。新教皇を決める教皇選挙「コンクラーベ」に世界中から100人を超える候補者たちが集まり、システィーナ礼拝堂の閉ざされた扉の向こうで極秘の投票がスタートする。票が割れる中、水面下でさまざまな陰謀、差別、スキャンダルがうごめいていく。選挙を執り仕切ることとなったローレンス枢機卿は、バチカンを震撼させるある秘密を知ることとなる。
映画.com より
鑑賞記録:2025年02月06日 飛行機にて
教皇をめぐる枢機卿たちの政治
タイトルからもわかる話ですが、誰が教皇になっていくのかと政治劇を軸に展開していく本作。その過程で明かされていく前教皇の秘密、枢機卿たちの思惑、駆け引きなどなど、見どころたっぷりであっという間です。正直派手なことはなんにもないのに引き込まれていくのが不思議で、シンプルにテンポいいなあと思いました。
教皇を選ぶという神聖な場であるにも関わらず、ドロドロな感じがどんな立場の人も力には弱いんだなあと思ってしまう限り。もちろん、全員が悪人というわけではなく、本当に神のために尽くそうとしている人物もいて。でも、その「正しさ」さえも(本当に正しいのか?)、教皇選挙中は利用されてしまうことも。レイフ・ファインズ演じるローレンスの苦悩が、表情からひしひしと伝わってきます。
ひとつだけ、事前に公式HPにある人の顔と名前だけ頭に入れておくとスムーズなんじゃないかな、と思います。なんせみんな同じ格好してて、聞き馴染みのない名前だったりするから、あーえー誰だっけとなりかねない。
精緻に再現されている(であろう)画面のすべて
重厚で陰影に富んだ画作りがとにかくすごい。荘厳。コンクラーベが行われるシスティーナ礼拝堂は本物だろ、これ! という質感(行ったことないけど)。再現したセットと聞いて、ビビりました。まあそうか撮影なんかさせてくれないか。
いい意味で顔に年輪を刻んだ俳優陣のおかげで影がうまく出ていて、物語の緊張感と神秘性、そして登場人物たちの心の裏側を表現していて唸るしかない。
加えて、フォルカー・ベルテルマンの音楽がまたいい! 不穏な空気を醸し出す旋律やコーラス、時に打ち鳴らされる打楽器のような音が、じわじわと不安を煽り、極上のミステリーを演出。静寂と音楽の使い分けも絶妙で、息詰まるような瞬間をより際立たせていて、たまらん。
映画を超えてくるリアリティ
ちょうど、2025年4月21日にフランシスコ教皇が亡くなられ、現実でも教皇選挙がおこなれるというタイムリーさ。映画は原作があって、取材をしまくって、公開されていない教皇選挙という世界を再現しているらしいんですが、なんかもう本当にあるんじゃないかっていう気がしてきてしまう。
教皇という計り知れない影響力を持つポジションをめぐって、普段は清廉潔白に見える聖職者が、裏では票集めに奔走したり、ライバルのスキャンダルを探ったり、人間臭さが他人事じゃないというか。「権力」の恐ろしさと魅力、そしてそれが人間をどう変えてしまうのか、見どころです。きっと、現実の教皇選挙の水面下でも争いがはじまっているのかもしれないなあ、なんて。
色々書いたけど、結局のところ、誰もが持っている野心、嫉妬、良心、そして信念といった、普遍的な人間の感情なんですよね。だからこそ、印象に残ってるのかな、とも。衝撃のクライマックス、映画を超えるリアリティは今まさに観ておくべき1本なんじゃないかと思います。普通におもろい。
そういえば、世界史でコンクラーベでやったよね。根比べかよって思ってたけど、あながち間違ってない。
おわり