フォックスキャッチャー
Foxcatcher/監督:ベネット・ミラー/2014年/アメリカ/135分
劇場公開日:2015年02月14日劇場公開(PG12) 公式サイト
鑑賞日:2015年02月24日 新宿ピカデリー スクリーン7 にて
映画川柳
彼でさえ 金で買えない モノがある
予告編
ざっくり、あらすじ
レスリング、金メダリストを襲った悲劇
マーク・シュルツ(チャニング・テイタム)はオリンピック金メダリストにも関わらず、質素な生活を送っていた。
そんなある日財閥御曹司ジョン・デュポン(スティーヴ・カレル)が現れ、人生が狂い始める姿を描いた作品。
感想、思ったこと
■静かな演技がさらなる演技を生み出す。
本年度アカデミー賞、監督賞、主演男優賞(スティーヴ・カレル)、助演男優賞(マーク・ラファロ)、脚本賞、メイクアップ&ヘアスタイル賞とノミネートされていた本作。残念ながら受賞はありませんでしたが、実話を基にした確かな作品でした。決して、面白いという作品ではないのですが、どっぷりと映画の世界に浸れるタイプの作品です。観る価値ありですね。
主演男優賞も助演男優賞もノミネートされているだけあって、演技が素晴らしいですね。特にジョン・デュポンを演じるスティーヴ・カレルは特殊メイクで「誰?!」と見違えるような姿で静かに、ただ静かに孤独な男を演じています。それがまた怖いんですよね。基本的にトーンの低い画面で、終始不穏な空気を漂わせてきます。そこに何だかわからない恐怖を感じました。また、彼の姿は本当に寂しそうで何とも言えない感情を呼び起こすわけです。
デイヴ・シュルツを演じたマーク・ラファロも出番は少ないながらも圧倒的な存在感で「本当に『はじまりのうた』の人?!」「ハルクなの?!」と疑いたくなる演技の振り幅を見せていました。いやーすごいです。父として兄としてのデイヴでしたね。レスリングのトレーニングシーンなんかのちょっとつま先にクセのある動きはレスリング選手特有なんでしょうか。Youtubeでデイヴの実際の試合映像を見た限りだとわかりませんが、そういった細かい部分まで演じているってことですよね。すげー。
でも、今回言いたいのはこの二人ではなく主演のチャニング・テイタム。なぜ、彼がノミネートされなかったんだ!っていう程に危うい演技を見せていたと思います。マーク・シュルツが兄デイヴとデュポンの間に挟まれ、狂っていく様が素晴らしかったです。チャニング・テイタムの演技がなければ、スティーヴ・カレルもマーク・ラファロもあの演技を引き出せなかっただろうなと思います。もちろん、逆も然りです。彼もまたレスリング選手を徹底的にリサーチしているのだろうなと感じました。ちょっとガニ股でズタズタと歩く感じ。パンツの中にTシャツをぶっこんで部屋をうろうろしているのには思わず笑いましたが。自分の知っているチャニング・テイタムではなかったです。筋肉だけだと思っていました、すみません。
あ、もちろん、今作でもチャニング・テイタムはその肉体を惜しげもなく披露しております。レスリング選手の体型なので、ムチムチって感じの肉体なので『マジック・マイク』の時のような締まりはなかったですね。ついでに言うとお尻も披露していました。もう途中でデュポンとトレーニングして、ハァハァ言ってるシーンなども含めて同性愛映画なんじゃないかと思うくらいに、ほぼ裸の男たちが徹底的に絡み合う映画でしたね。実際のデュポンにはそういう噂があったようなのですが、そこらへんは触れてなかったんですけどね。
■孤独な人が求めるモノ。
このジョン・デュポンという男は財閥の御曹司で欲しいものは何でも金で手に入れるという人なのです。そして、家族とは何やら上手くいってない。特に母親との関係はその育った環境ゆえに寂しさを抱えた孤独な男でもありました。
だからこそ、この結末があったと考えるとどこか切ないですね。「幸せ」や「愛」の象徴である「家族」というものが欲しくてたまらなかったんだろうなと思います。でも、それだけはお金で買えない。それを持っているヤツらが憎くなってしまう。そんな感情は誰もが抱きかねないものなのではないかなと思います。だからといってしていいことと悪いことはありますけどね。
昔は友情だって結局はお金だろ、と擦れていた時期もありました。まるで中二病ですが、人と繋がるのにお金が必要な世の中であることには間違いはないかなと思っています。どこかに遊びに行くにしてもお金が必要だし、連絡を取るにも意識はしていないけどお金が掛かっているわけです。そんなことで切れる縁は本物じゃないなんていう見方もできると思いますが、実際のところはどうなんでしょうね。お金で買えない部分も確かにあるので、難しい話ですけど。
なんていうことを帰り道にふと思ってしまう孤独な男の物語の余韻に浸れます。あまり浸りたくはないですが。
ムチムチの男たちがほぼ裸に近い状態で絡み合う映画ですので、それなりの覚悟の上で鑑賞ください。
フォックスキャッチャーのジャージ欲しいです。
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