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[映画の感想]『キャロル』視線が語る、女性同士の愛の行き先

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[映画の感想]第88回アカデミー賞において主演女優賞、助演女優賞とノミネートされているラブストーリー『キャロル』を試写会で一足早く観てきました。想像以上にうっとりするような美が堪能できる作品になっていて、ケイト・ブランシェットもルーニー・マーラの演技に釘付けになりました。

キャロル

(C)NUMBER 9 FILMS (CAROL) LIMITED / CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION 2014 ALL RIGHTS RESERVED

 

目次

キャロル

Carol/監督:トッド・ヘインズ/2015年/アメリカ/118分

 

劇場公開日:2016年02月11日劇場公開 公式サイト

 

映画川柳

 

気付いたら 視線の先に いつもいた

 

ざっくり、あらすじ

 

わたし、あなたのことが気になって仕方ないの

 

デパートのおもちゃ売り場担当のテレーズ(ルーニー・マーラ)は、クリスマスを前にしたある日キャロル(ケイト・ブランシェット)に出会う。そこから二人が友情を超えていく姿を美しく描いた作品。

 

感想、思ったこと

そこら中で評価されている演技は嘘偽りなく素晴らしいものでした。アカデミー賞の発表が楽しみです。主演女優は難しくても、助演女優賞獲って欲しいですね。あ、ただルーニー・マーラが好きなだけです。

■同性愛というテーマ

この作品が話題になっているポイントの一つが「同性愛」だと思うんですけど、時代が時代だけにまだまだ理解されてないわけで、そういったものを考えると視線だけで愛を語ろうとするこの作品がより響いてきたりするんですよね。

舞台となっている時代は1950年代なんですけど、戦後間もない時期ではあったもののアメリカとしてはかなり盛り上がっていた時代ですよね。だからこそ女性であれば、今で言うセレブに憧れを抱くんですよ。さらに家庭があるとなると点数はさらに上!みたいな。
そんなこともあってか、テレーズはキャロルに惹かれるんです。「自分もあんな風に生きたい」そりゃデパートでおもちゃ売ってる生活なんて嫌ですよね。

逆に、キャロルはキャロルで家庭に縛り付けられ、上手くいっているとは言えない状況に鬱憤も溜まっているんです。そんな時に仲良くなったテレーズのことが夢を持って自由に生きているように見えたんでしょうね。

そんな憧れから発展して、人が人を好きになるっていうことに関しては純粋なラブストーリーにしか見えなかったです。それに同性愛がテーマとはいうものの、主人公の二人は同性愛者と括っていいのかも曖昧な存在だったので、友情の向こう側っていう感じがイメージとしては近い気もしました。

ただ、人を強く突き動かすものは友情ではなく愛だと思うので、難しいです。

同性同士でいちゃつくことをすべて同性愛として考えるのか、それとも同性愛者が恋愛をすることとして捉えるのかっていったところです。個人的には後者をちゃんとした同性愛を描いているものとしているので、『キャロル』に関しては、どちらの女性も異性愛者(ストレート)、もしくは両性愛者(バイセクシャル)に見えたので、同性愛を描いていることに間違いはないのですが、それ故の切なさや哀しさっていうのは弱いように感じました。
もちろん、ありますよ切ないシーン。それ言わないでよ!って思った車のシーン。ああ、思い出すだけで泣ける。

そんなテーマを扱っているがゆえに、アカデミー賞作品賞にはノミネートされなかったのかも知れないのですが、それ以外にも理由はあるのかなと思います。個人的には、いい意味で程よく退屈な作品だったなという印象があるので、選ばれなかったのもなんとなくわかります。

もちろん、現代の同性愛を認めていく流れの中で、この作品が公開されるというのは面白いことだと思うし、だからこそ評価もされて欲しいなという想いはありますね。
近いところで言うと『ブロークバック・マウンテン』が近いなーと思いました。あれも同性愛映画の名作として語られていますけど、ちゃんと同性愛を描いていないというかなんというか。アカデミー賞に嫌われてもいましたしね。
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ちなみに、50年代であることがわかるポイントが大統領の名前だったのが、何かいいなって思いました。アイゼンハワー大統領ですね。

 

■どっちも主演でいいんじゃないの?

この作品の良さは映像の美しさとか質感、衣装、美術などなど色々ありますが、何よりも2人の女優の存在が大きすぎるなと思います。

少し威圧的なのに、上品で艶のある声で話すケイト・ブランシェットはもうキャロルという女性を完全に創りあげていましたし、視線だけで想いを語ろうとするルーニー・マーラに関しては、完全に恋する乙女になっていて、彼女たちの過去作から考えてもトップクラスの演技だったのではないかなと思います。

やっぱり、言葉以外で何かを伝えるっていうのは演技の醍醐味なんだなーと感じました。

個人的に印象的だったのが、ケイト・ブランシェットの肩甲骨まわりの筋肉です。もうこれがごっつくて、まるで男性のような見た目なんですよ。その肩で白くか弱いルーニー・マーラを包み込むシーンは官能的で、妙な浮遊感を味わいました。どっちが主演でもいいですし、どっちも主演がいいと思うほどにお互いに演技で魅せ合っていました。視線は注目ですね。

そんな2人の女優を引き立てていたのは、やっぱり黄色みの強い映像の質感だったり、赤を貴重とした時代を感じる衣装、また家具などの美術関係が美しい映像を作り上げていたからこそだなと思いました。なんだか、美術館で絵画を観ているかのような気分になる作品でしたね。

あと、この作品の音楽カーター・バーウェルっていう方が担当してるんです。あれです、コーエン兄弟監督作でお馴染みの方です。
そのスコアが実に不安定なんですよ。他の楽器もいますが、基本はピアノとストリングスのシンプルな構成なのに、落ち着かない響きをひたすら鳴らしてます。特にピアノ。これは、わたしの好み!いや、こここうだろ!っていう思い通りに音楽が流れないの!何これ!

美しいという言葉で片付けるのは簡単ですが、完璧でない、不完全さみたいなのに美を感じるものなんですね、やっぱり。

個人的にはカメラと写真がポイントとして使われていたのが、非常にポイント高かったです。

パトリシア・ハイスミスの原作をよく再現できているなんて話も聞くので、原作小説も読んでみようと思っています。
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最後になりますが、オープニングに一番感動したんですよね。スクリーンいっぱいに映し出されるとあるものが、自分の中では思いもよらない視点で一人興奮してしまいました。

先入観などで「これはああだ」なんて決めつけたり、思い込むことがあるとは思います。でも、視線の先にあるものが美しいと感じたらそれは美しいんですよね。誰が何と言おうと。そこからは、もうずっと目で追いかけてしまうんだから、恋って厄介です。

紅茶かなんかを飲んで余韻に浸りたい作品でした。

 

予告編

 

 

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