[映画の感想]『イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密』孤独な男が愛したマシン。 A+

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イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密

The Imitation Game/監督:モルテン・ティルドゥム/2014年/アメリカ・イギリス/115分

 

劇場公開日:2015年03月13日劇場公開 公式サイト

鑑賞日:2015年03月13日 TOHOシネマズ錦糸町 スクリーン8 にて

 

映画川柳

 

不器用な 彼が抱いた 想いとは

 

予告編

 

 

ざっくり、あらすじ

 

暗号解読は僕にしかできない。

 

第二次世界大戦中の英国でナチスの暗号”エニグマ”解読に身を投じた、

天才数学者アラン・チューリング(ベネディクト・カンバーバッチ)の知られざる過去を描いた作品。

 

感想、思ったこと

■見事な暗号解読と人間ドラマ。

アカデミー賞で脚色賞を受賞した本作は史実を基にしたドラマですね。今年ベスト級です。

エニグマというナチスの軍事暗号を解読したにも関わらず、その存在は決して有名ではなかったアラン・チューリング。そんな彼に焦点を合わせたドラマを暗号解読という高揚感のある話と巧みに交差させて見せていくのはよかったですね。彼の人格を形成する中で非常に重要な少年期、エニグマと戦った戦時中、そして戦後という3つの時代が途切れることなく交錯しながら語られていきます。

ただ、ひとつ不満を言うのであれば、限られた時間の中で見せる話としてはエピソードが弱かったりして、感情の変化が少し唐突なのではと思ってしまう部分もありましたが、あまりにもテンポよく進むのでそんなに気にする事でもないのかな、と思いました。

 

それから、銃撃戦や戦闘機の活躍しない戦争映画でもあるんですよね。結構、こういうスパイものみたいなのは好きなんですよね。騙し騙されみたいな駆け引きが面白いなって。そういう面での面白さももちろんあります。難しそうな題材に見えますが、難しい言葉なんか一切出てこないし、わかりやすいです。主軸はあくまでもアラン・チューリングという人物なので。そして、タイトルの「イミテーション・ゲーム」が意味することってなんだろうっていうことを考えながらエンディングを迎えると切なさで胸がいっぱいになりますね。

 

主演のベネディクト・カンバーバッチってお世辞にもイケメンだなんて言えないと思うんですよ。ファンの方には申し訳ないのですが。でも、イケメンとかそうじゃないとかっていうのとは別のところに彼の魅力があるんじゃないかなと思いました。なんていうんでしょう、親近感みたいなもの。親しみが感じられるなっていう。それでいて、異質な存在を演じられるのだから主演男優賞ノミネートも納得です。今回の演技はマジでよかったです。

天才はよくアスペルガー症候群だったのでは、というのはよく言われていますが、アラン・チューリングもだったのでしょうかね。そのあたりの体現もお見事だったなと思います。

 

個人的にプラス評価なのは、音楽がかなり抑えられていたということ。もちろん、鳴らすところはドラマチックに流れてはいるのですが、それが主張してこないのでうっとうしくなく、集中できます。ずっと、バックで同じピアノの旋律を流し続けているのも面白いですね。

音楽を担当しているアレクサンドル・デプラはこの作品と『グランド・ブダペスト・ホテル』の二作品でアカデミー賞にノミネートされ、『グランド・ブダペスト・ホテル』の方で受賞をしているんですが、こっちで受賞してもおかしくないようなスコアでしたね。相変わらず影のある音楽が得意ですね、この人。アラン・チューリングという人物自体が謎めいた部分があるので、マッチしています。

 

 

■同性愛者に対する考え。

今作の主軸であるアラン・チューリングは同性愛者だったとされています。今でこそ英国は同性愛者を法的に認めている国の一つではありますが、過去はそんな寛大な姿勢などまるでなく処刑など当たり前だったそうです。戦後も犯罪者扱いをしていたみたいですね。映画の中でも描かれていました。

つい、先日ロンドンへ旅行に行ってきたのですが、ミュージカルを見るために訪れたピカデリーサーカス付近のソーホーというエリアが日本で言うところの新宿二丁目のような場所で、普通に手を繋いで歩く男性同士のカップルなどを見てきたばかりだったので、現在とのギャップにただただ驚きましたね。

そして、映画の中でアラン・チューリングが同性愛に目覚めるエピソードがあるのですが、これがまた効いてるんですよね。映画的に。同性愛者が皆、こういった明確な目覚めたエピソードを持っているとは思えないのですが、やっぱり何かがきっかけになるんですよね。「孤独」ってパターンは多そうですね。孤独を救ってくれた人が男の人だった。相手にその気はなくても、優しさに甘える気持ちは次第に自分でもわからない、普通じゃない感情になっていく。そんな姿が明確に描かれているために彼に対する理解が深まるのでクライマックスは本当に響いてきましたね。

正直、彼は生涯に渡って孤独な男だったと思います。唯一の理解者のように見えるキーラ・ナイトレイ演じるジョーン・クラークも彼に寄り添うことはできていなかったなと思うのです。彼を支えていたのは確実ですが。孤独だから、彼はマシンに執着していた。マシンを作り続けることができたのかなとも思いました。彼なりの愛を求めた結果がこれとは哀しいです。

 

日本でも現在同性愛者に対する法的な話が色々とされていますが、そういったゲイ映画の視点からも何かを考えるきっかけになる作品なのではないでしょうか。

言いたいことがうまくまとまっておりませんが、良い作品です。本当に。

アラン・チューリングという人物を知ることも今を生きる身としては、結構大事なことなのでぜひ観て欲しい作品です。

 

 

The World Is An Infinitely Better Place Precisely Because You Weren’t.

 

 

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