[映画の感想]2006年の「この恋愛小説がすごい」に選ばれた同名小説の実写映画化。原作は未読だけど、肉体的な恋愛小説の熱が出演者たちの熱演と情感たっぷりな映像で見事に描かれた作品。とりあえず、エロいんだけど、なんだろう切ない。そんな有村架純の表情が素晴らしかった。
ナラタージュ
narratage/監督:行定勲/2017年/日本/140分
劇場公開日:2017年10月07日劇場公開
映画川柳
あなたとの 過去を思えば 雨が降る
ざっくり、あらすじ
先生のことが忘れられない
工藤泉(有村架純)が夜遅くまで仕事をしていると、同僚の宮沢(瀬戸康史)が雨に濡れてオフィスに現れる。その時、持ち物について問われ、高校時代の教師との恋愛を想い出す。
感想、思ったこと
「ナラタージュ」は、ナレーションとモンタージュを組み合わせた回想を表現する技法。だから、この映画は現代の主人公が過去を語るように作られている。雨の日に、思い出し、語る。有村架純の繊細に表情が移りゆくのが自然と感情を物語っていて素晴らしいの一言。お尻痛くなったけど。
■やっぱり言葉より表情
『世界の中心で愛を叫ぶ』や『クローズド・ノート』、最近だったら『ピンクとグレー』あたりが有名な行定勲監督。今回はおそらく得意な恋愛ものということで、情感たっぷりな映像と有村架純がとても好き。
映画全編を通して、彼女の表情の移ろいが重要で、物悲しさ、苦悩、葛藤、これじゃない感、愛されてるけど何か違う、過去から今、未来へ向ける表情など、どれをとっても心に直接語りかけてくるようなもの。泉が高校時代に感じていたこと、大学時代に感じたこと、今現在感じていること、色々な想いが語られる。これがなかったら、140分の長尺に耐えられない映画になっていたかも。お尻痛かった。
小説って文字だけだから、読む側が勝手に行間を読むことで補完できることがあって、それが楽しみの一つでもある。けど、映画って直接映像として観るから、そこに言葉以上に意味がいっぱい詰まってないと「つまらない」なって思う。言葉で語りすぎるのは映画としてよくない。
作品タイトルからも連想できるけれど、非常に「映画」的な映画になっている。言葉としてももちろん語るけど、基本は映像から読み取らせる。登場人物の動き、表情、カメラワークなどで語る語る。
「映画」っていうポイントはもう一つあって、主人公の工藤泉は映画配給会社に勤めるほど、映画が好き。クラシックな作品を好きになるのは、高校時代の恩師、葉山(松本潤) の影響もありそうだけど、とにかく映画好き。映画がキーとなっている部分も多く、映画好きとしては「恋愛に映画が絡む」というシチュエーションは他人事ではない。そんな気がする。
■一人じゃ引き出せない演技合戦
そんな映画的要素は有村架純一人じゃ絶対出せなかったかな、と。高校時代の恩師、葉山を演じた松本潤と葉山を想いながらも付き合うこととなる小野を演じる坂口健太郎の二人がいてこそ。予告にも使われているけど泣きのシーンはマジで最高。
松本潤は心ここにあらずのような感情がどこか死んでいるかのような瞳で、声の演技が絶妙。主人公にとっては忘れられない、かけがえのない人物であるけれど、葉山には奥さんがいる。先生と生徒という禁断の恋愛がより危険なものとなって、2人の感情を燃やしていく。この過程の中でも、ブレずにどっちつかずの葉山を演じている。これがまあ少しイライラする。はっきりしろよって。けど、そうもいかない現実もあり。イライラするわけです。ラストには、イライラは別の感情になりますが、多くを語らない、言葉にしない、まるで映画のような人物を好演。
そして、対照的に坂口健太郎演じる、小野は何でも語りたがる。好きって言って、愛してるのを確かめたい。どうにかこうにか泉の気持ちを引き止めたくて、確かめたくて必死。序盤の好青年から神経質で少しヒステリックな様まで見事に演じ分けていてすごい。元々モデルだったのに、もうすっかり俳優さん。本当器用です。筋肉質で無駄のない体も披露していて、有村架純との濡れ場は、ただ一言にエロい。何か艶めかしさがあって、どこかリアル。これはエロい。ちょっと無理やり愛を確かめようとするセックス。濡れ場撮るの好きだよね、監督。
このセックスもすごく重要で、有村架純の表情が全然違う。坂口健太郎と松本潤に対して異なった想いを抱いているのがよくわかる。注目して欲しい。そして、ラストのあの表情。瀬戸康史、ちょい役だけどとても重要な役割。
恋愛映画だけれど、デートにというよりかは友達同士とか一人とかで観たい作品。その後、しっぽりお酒飲みながら語らいあってもよさそう。そんな感じ。帰り道、主題歌、さっそくダウンロードしました。
適度に語り、表情で伝える。大事なこと。行き過ぎない。
おわり。
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