どうも、映画おバカ・manabu( @mnbspark )です。第33回東京国際映画祭の特別招待作品にラインナップされていたので一足先に観てきました。『南極料理人』、『横道世之介』の沖田修一監督最新作ということで期待大。世之介も東京国際映画祭での出会いだったなー。
ひとり暮らしのおばあちゃんを演じているのが、本作が15年ぶりの主演作となる田中裕子。認知症のような、ただの独り言のような絶妙な老いの表現がよかったです。それに加えて彼女の寂しさを演じる濱田岳、青木崇高、宮藤官九郎がイイ。またまた、いい映画撮ってくれました。よき。
おらおらでひとりいぐも
劇場公開日:2020年11月06日
日本/2020年/137分
監督:沖田修一
音楽:鈴木正人
出演:田中裕子/濱田岳/青木崇高/宮藤官九郎/蒼井優/東出昌大 ほか
あらすじ・解説
あらすじ・解説
第158回芥川賞と第54回文藝賞をダブル受賞した若竹千佐子のベストセラー小説を「横道世之介」「モリのいる場所」の沖田修一監督が映画化し、昭和・平成・令和を生きるひとりの女性を田中裕子と蒼井優が2人1役で演じた人間ドラマ。75歳の桃子さんは、突然夫に先立たれ、ひとり孤独な日々を送ることに。しかし、毎日本を読みあさり46億年の歴史に関するノートを作るうちに、万事に対してその意味を探求するようになる。すると、彼女の“心の声=寂しさたち”が音楽に乗せて内から外へと沸き上がり、桃子さんの孤独な生活は賑やかな毎日へと変わっていく。75歳現在の桃子さんを田中、若き日の桃子さんを蒼井、夫の周造を東出昌大が演じるほか、濱田岳、青木崇高、宮藤官九郎という個性的なキャストが桃子さんの“心の声”たちに扮する。
映画.com より
鑑賞記録:2020年11月03日 TOHOシネマ 六本木 スクリーン7
田中裕子、おそるべし
夫に先立たれ、ひとり暮らしをする桃子さん。彼女が孤独と向き合った先にある新しい生き方、老い方を教えてくれます。寂しくっていい。孤独でもいい。そんな人生讃歌。ぽかぽかしてて、観ているだけで穏やかな気持ちになれます。
絶妙な老いの感じ、東北弁、どれをとっても居心地がよくて、大女優・田中裕子って感じ。おしん、ですね。すみません、ちゃんと観たことないです。
そして、脇を固めるキャストも「この人以外で想像できない」レベルでハマってます。岡山天音や田畑智子もいいけど、やっぱり寂しさという感情そのものを演じる、濱田岳、青木崇高、宮藤官九郎。三者三様なキャラクターで映画を盛り上げてくれるのですが、鬱陶しさすらあって、愛らしい。自然と受け入れられちゃう馴染みのよさがありました。寂しさが人生を豊かにしてくれるって何かいいですね。上映後のトークでこのあたり、結構自由にやっていたようで、納得です。
沖田修一監督の人を捉えるやさしさ
芥川賞と文藝賞を受賞した若竹千佐子の同名小説が原作。「おらおらでひとりいぐも」という言葉は「私はわたしで、ひとり生きていく」的な感じなんですかね。東北弁詳しい方、教えてください。
孤独や老後、認知症のようなちょっと重いものが背景にあるものの、影はなくずっとぽかぽかしています。ユーモラスです。沖田監督の描く世界はいつもこの雰囲気があり、やさしく登場人物たちを捉えてくれるなって思います。その視線っていうのが主人公を取り巻く世界やキャラクターからちゃんと伝わってくるので、ぜひ注目して欲しいです。
監督の人柄が好きだから、沖田監督が撮ったってだけで観ちゃうんだよね。特有の間合いや会話の面白さも相変わらずで、クスッとさせてくれます。いやー好きだなあ。あ、今作にもちゃんと黒田さんが出演していますよ。
孤独な老人の新しい生き方
たまに「自分はきっと一人老いて、死んでいくんだろうな」っていう不安や恐怖を考えてしまうことがあります。その答えじゃないけど、考え方の一つを教えてもらった気がします。孤独からの自立。一人でも生きていける。そんな気がしてきます。
映画の中で直接的に「死」と向き合うことはないんだけど、老いの先にあるものに向かっていくのだから、そういうことです。劇中でも色々な形で表現される地球46億年の歴史と自分の人生、大きく捉えれば重なる部分も実は多いのでは、と思ってしまう不思議。というかそういうことなんだと思うんです。映画の冒頭からびっくりさせてきます。
きっと、何年もあと、何十年もあとに積み重ねてきた記憶を振り返りながらこの映画を観たら、もっともっと刺さるのかな、って思います。親に見せてみようかな。
おわり