[映画の感想]1年前に死んでしまったバンドのボーカル・アキ(新田真剣佑)と一人でこもりがちな大学生・颯太(北村匠海)が出会い成長していく様を描いた音楽映画。劇中の楽曲のよさを引き上げるW主演の2人の歌声に思わず熱くなる。
サヨナラまでの30分
監督:萩原健太郎/2020年/日本/114分
劇場公開日:2020年01月24日劇場公開
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ざっくり、あらすじ
ねえ体、貸して
1年前に死んでしまったECHOLLというバンドのボーカル・アキ(新田真剣佑)。彼が使っていたカセットテープを就職活動中の大学生・颯太(北村匠海)が偶然拾う。そのカセットテープを再生している30分だけアキと颯太は入れ替わることができる。アキは颯太の体を何度も繰り返し借りながら、バンドを再結成させようとする。出会うことのなかった人たちとの交流の中で成長していく颯太を音楽とともに描いた作品
感想、思ったこと
予告編を見たときから「好きそうな匂いがする」と思っていた映画がようやく公開。オープニングを観て「やっぱり好き」。まずオープニングがいい。そして映画のために書かれた音楽、映像の質感、ただただ好み。もちろん、これ大丈夫か、っていう演出も色々あったけど、歌がいいから目をつぶれる。原作がないオリジナル作品ってやっぱいいな。
入れ替わりとカセットテープの仕掛け
アキと颯太という2人の主人公が「入れ替わる」ことによって話が進んでいくんだけど、その仕掛けとしてカセットテープが使われていて、この設定がうまい。
カセットテープを再生すれば無制限に入れ替われるわけじゃなくて、ちゃんとカセットテープの長さ分、映画だと30分だけという制限がある。そして、そんなカセットテープの性質がクライマックスに向けてちゃんと活きてくる。このあたりのSFな設定が2人の関係の儚さや切なさを強くさせる。そういうの好き。
カセットテープを使ったことがある世代には受け入れやすい仕掛けだけど、今の生まれたときからiPodみたいな場合はあんまりピンとこない気もする。もちろん劇中で説明があるから平気とは思うけど。CDなんかじゃ余計にわかりにくい仕掛けで、アナログな良さを感じた。
新田真剣佑という才能が恐ろしい
『ちはやふる』シリーズで観たときから真剣佑はすげーなって思っていたけど、改めて「目で演技ができる実力派」な役者さんだなと感じた。いわゆるイケメン俳優として、まとめてしまうのがもったいないくらい役者に、演技に向き合ってるんじゃないかと思う。出演作品は色々観てきているけど、まだ引き出しがあって、こんな表情もできるのか、と驚きがあるほど。
キラキラと瞳を輝かせて少年のような笑顔をすることも憂いのある繊細な表情をすることもできちゃう。だから、セリフがなくても感情がしっかり伝わってくる。ハツラツとした姿は見ていて気持ちがいい。
今作においては、その演技力にプラスして歌唱力も惜しげもなく披露してくれていて、その才能に恐ろしくなった。歌、うますぎやしないか? なんなら、まだ余力があるように感じたから、歌に関してもきっとポテンシャルが高いんだろうなあ。特に真剣佑だけで情感たっぷりに歌い上げる「風と星」は必聴と思う。
ちなみに、W主演である北村匠海も演技派で安心して見ていられる。明るい真剣佑と陰気な北村匠海の対照的な演技がいいバランスだった。そして、実はアキが入っている颯太を一人二役で北村匠海が演じているのが面白い。今、どっちなのかちゃんとわかる表情の変化があって演じ分けを見ているのが楽しかった。
特に、クライマックスは音楽と相まって感情がどっと押し寄せてくる感じが青春音楽映画ならではでいい感じ。若者言葉を使うなら「エモい」。クライマックスはもう一回観たい。
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2人の歌声あって成立する青春音楽映画
映画全体を通して、映画に合わせて書かれた楽曲の良さが際立っていた。そしてそれをエモーショナルに歌い上げる主演の2人がただただすごい。
「俺が俺が」なアキと「他人なんて」な颯太がそれぞれ成長し変わっていく姿。ラストの決意の向こう側にある切なさが本当にグッとくる。カセットテープが憎くなる。
ちなみにパンフレットはA面・B面の表記があって、開く方向で違う内容が楽しめる。
A面はキャスト、B面はスタッフと別目線で作品が語られている。820円(税込)
サントラのECHOLL楽曲分(全8曲)がきっかり30分で収録されているなんていう粋な細かさ。映画を見終わったあとの体験まで楽しめる。2人のファンはもちろん、なんかいい感じに軽やかな映画みたいなって方がいればぜひ。
おわり