[映画の感想]ドゥニ・ビルヌーヴ監督の最新作であり、1982年公開の『ブレードランナー』の正統な続編。正直、不安なこともいっぱいあったけど、期待を遥かに超えた映像美とわかりやすく哲学的な考察を描く物語に、ただ酔いしれるだけの2時間40分。ズシンと心を震わすSFミステリー作品。いやー今年も生きててよかった。
ブレードランナー 2049
Blade Runner 2049/監督:ドゥニ・ビルヌーヴ/2017年/アメリカ/163分
劇場公開日:2017年10月27日劇場公開
映画川柳
誰だって 特別なんだ 信じてる
ざっくり、あらすじ
一体、どこに行ったんだ。
レプリカントと呼ばれる人造人間と共存する世界。同類の始末を仕事とするロス市警所属のレプリカント”K(ライアン・ゴズリング)”は、とある仕事から大きな事件に巻き込まれることになる。前作『ブレードランナー』としっかり繋がっている作品。
感想、思ったこと
1982年の『ブレードランナー』にとてつもなく思い入れがあるわけではない。けど、好きなSF作品のひとつ。『ブレードランナー 2049』は最初ちょっとどうなっちゃうのか不安だった。あんな余韻たっぷりなハリソン・フォード版にどんな続きを用意してくれるんだ、と。観たら不安はいらなかった、立派な続編。続編というか何だろう、ブレードランナーを読み解くためのブレードランナー的な。
■ライアン・ゴズリングとドゥニ・ビルヌーヴ
この二人、今年のアカデミー賞で話題だった。相当、世間を騒がせた傑作ミュージカル映画『ラ・ラ・ランド』で主演を務めていたライアン・ゴズリング。圧倒的な映像美で見せるSF映画『メッセージ』で作品賞、監督賞を中心に数多くノミネートされていたドゥニ・ビルヌーヴ。何が言いたいかって、すごい二人がタッグを組んだんだってこと。
ライアン・ゴズリングの表情を変えず、感情を表現しない演技。というか、もはやそういう顔。これが人造人間に実はピッタリで。自我と葛藤する姿は見事としか言えない。それを不穏な空気感を出すのが得意なドゥニ・ビルヌーヴと相まって、荒廃した2049年の『ブレードランナー』と続く世界観を作りあげていた。
『灼熱の魂』っていう映画で注目されたドゥニ・ビルヌーヴ監督の作品はどれもこれも一筋縄ではいかないものが多い。個人的に鑑賞後、どうしようとなってしまったのが『複製された男』。これは、もう一人の自分が現れて、とち狂っていく映画なんどけど。何だろうこの映画と醸し出す雰囲気が似ている。そんな気がしながら映画は進んでいく。
監督はいつも哲学的な余白を作って、観ている側に「考えさせる」のが好き。これこそが映画を観る醍醐味でもあるよね。テレビドラマのように何でもかんでも説明するんじゃなく、小説のように行間を読み、世界を読み解いていく。その過程が楽しい。
■生まれたものと作られたもの
ブレードランナーは人造人間と人間が同居している世界の話。今回は「生まれたもの」と「作られたもの」という枠組みで生命を考えはじめる。人間が人間たらしめるものって何なのか。映画の中で主人公・Kが言うとおり「魂」なのか。それを考えて、悩んで、葛藤するのが人造人間という皮肉。しかも、AIであるジョイに「あなたは特別よ」とそそのかされて、自ら苦しみの中に埋もれていく。まあ、あんなに可愛い子に言われたら、そりゃどうにかなっちゃうわな。マジ、可愛い。これなら欲しいです。
魂が欲しい人造人間と身体が欲しいAIと何だか切なさすら感じる二人(?)の関係性が物悲しい。いや、もうなんか切なくなってしまった。あと、とても気になったのは、この映画、出てくる人たち皆、幸せそうな顔をしてなくて、どうしたものか。
前作『ブレードランナー』で謎のように残っていた疑問に対して答えを示しつつ、その世界をライアン・ゴズリングとドゥニ・ビルヌーヴが紐解こうとしているような構図にも見えた。リドリー・スコットが製作総指揮に回って、彼らに映画を撮らせたのは『ブレードランナー』を辿っていく『ブレードランナー 2049』の別の視点が欲しかったんじゃないかって。考察記事を別に書きたいくらい。ブルーレイとか出たら繰り返し観ながら書こうかな。
話がとっ散らかってきたから、終わりにしようかな。物語が大きく動き出す後半戦はとにかく目が離せなくなる。ちなみに予告編の内容にたどり着くまでが2時間あるので、実はかなりの長旅展開。思っているほど長く感じないし、あっという間。映像を楽しんでたら、それだけで終わるから。
けど、トイレは絶対行っとくべき。できたら飲み食いしない方がいいかも。集中、集中。
おわり。
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